映画『まく子』感想。草彅剛の不良父さんぶりが光っている。海外で勝負してほしい俳優

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まるで火野正平の再来のごとくヤバくて色気のある草彅君。どうしてこうなった

(ネタバレありです)

映画『クソ野郎と美しき世界』の3作目でも、俳優として草彅君のアウトロー演技は光っていたと思う。今作「まく子」でもアウトローとまではいかないものの、奥さんがありながら平気でよそに若い女を作る、困った不良中年の父親をみごとに演じている。これが本当に、飄々としてしなやかな色気があって格好いいんですよ。チョナンカンとして韓国で活動していたこともあるけど、語学力を生かして韓国映画で「ヤバい日本人」を演じたら國村隼に続いてブレイクするのではないか。韓国俳優ってすごい雰囲気ある人多いですけど、草彅君のこの危険で不穏な魅力というのは負けてないと思う。

 映画としては小学校高学年の少年少女をテーマにした、思春期と性の目覚めの前で生きることに迷う気持ちを描いた西加奈子の小説で、これを映画にする時ってローティーンの俳優を全面的に信じるしかないんですよね。同世代の、学校に通っている少年少女の演技に委ねるしかないところがある。山﨑光くん、新音さんをはじめとする子役はそういう重い役目に良く答えていたと思います。

 

 評価が分かれるのはたぶんラストで、思春期小説、ジュブナイルでありつつ、最後にある種のスピリチュアルなビジョンが出るんですよね。ここはリアリズム映画だと思って見ていた観客は少し戸惑うと思う。

 「自分を宇宙人と自称する女の子」って、そういう変わった子なんだと思って見てるわけじゃないですか。ラスト10分みたいなところでテレパシー的なモチーフが出てくると「おい本当だったのかよ、早く言えよ」というのはある。それならそれで映画序盤から「いやマジで不思議なこと起きるからねこの映画」という伏線があった方がよかったと思う。これは草彅君の演技がマジで良くて、リアリズムの思春期映画、家族映画として一級品の流れだっただけに「えっこれスピルバーグ的なSFだったの?」という感じにはなってしまうんですよね。ただこれは映画の問題と言うより小説自体が福音館から刊行された小説で、原作にほぼ忠実に映画化してるのでなんとも言えないなとは思う。

 草彅君についてはこれまでも何度も書いたけど本当に海外で勝負してほしいと思う。子役陣もよかった。特にヒキっている類くんを演じた内川蓮生くんもよかったなあ。将来が楽しみです。