映画『アラジン』感想。これはディズニー版の『さようなら、ドラえもん』なのだと思う。

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『アラジン』は6月7日日本公開の映画で、今日は8月20日である。今まで何やってたんだよお前、と言われるかもしれないが、あまりにもヒットしているからどうせロングランするだろう、もっとガラガラになってから見ようと思っていたら全然ガラガラにならないまま夏が終わりかけているわけである。興行収入100億円突破。ディズニー実写映画史上3位。上にはもはや『アリス・イン・ワンダーランド』と『美女と野獣』がいるだけである。すげえなオイ。日本人ってそんなに『アラジン』という話好きでしたっけ?シンドバッドとアラジンとアリババがつねに混乱している僕はこの超絶大ヒットの理由がわからないままいつか見ようと思い続けていたのだが、遅ればせながら映画を見て理由がわかった。非常に身もフタもない結論だが、映画そのものが出来が良くて面白いのである。脚本が巧みで俳優が良い。自分で書いていうのも何だがなんとつまらない批評なのだろうか。グルメレポーターがカレーライスを食って「カレーがおいしくてライスがうまい」と言ってるような駄文である。でも本当に良い作品というのはそういうものなのだ。後世に残る名作、新しい古典と言っていいくらいの完璧な映画、しかもその2019年が産んだ名作の主演アラジン役をつとめたのはこう言っちゃなんだが、まったく鳴かず飛ばずで映画界の底を転がっていた無名俳優、メナ・マスードだったのである。

 

 

 ツイッターでも書いたことなのだが、メナ・マスードが素晴らしいのはもちろん(本当に素晴らしい。アラジンがどういう男なのか、映画的な説明の前に表情だけで内面が伝わってくるのである。しかも錦戸亮に似ている)、いくら素晴らしいとは言え、この規模の超大作の主演に27歳の無名俳優を据えるディズニー帝国の自信がすごいわけである。逆説的だが、「どんな無名俳優が主演だろうとディズニーの映画なら必ず初動は動く。あとは内容で勝負だ」という、完全にインフラを押さえている自信がなければこんなキャスティングはできないと思う。

ただその一方、『アラジン』という映画の本当にすごいところは、金にものを言わせて作った他国が追随できないようなパワーVFXバーチャルムービーではないということだと思う。この映画の本質は「脚本と俳優の演技力」というものすごくクラシックな映画のど真ん中にあり、しかもその俳優というのはメナ・マスードとナオミ・スコットという、巨額の出演料を要求するスーパースターではない若い二人だ。ぶっちゃけ脚本と新人俳優の力で、ディズニー実写史上最高を誇るスーパースター、エマ・ワトソンの『美女と野獣』をむしろ凌駕するくらいの出来なのである。メナ・マスードとナオミ・スコット、この二人を組み合わせれば最高のアラジンが作れる、というのは、理論上はディズニー以外でも可能なのだが、でもそれをやったのは最終的にやはりディズニーであった、というのが悔しいところだ。

『アラジン』のすごいところは、キャストがほとんど非白人とか、ジャスミンがフェミっているというのもあるのだが、それらが「新しい思想を入れましたよ!」というのではなく、むしろ千年前から女の子は自分の意志を持っていましたよ、そんなのあたりまえでしょ?というくらい、まるで昔話のように自然に語り聞かせるところにある。これはジャスミンフェミニズムの物語であると同時に、アラジンという男の子の視点から見た「シンデレラ」の裏返しなのだ。男の子がそのガラスの靴を脱ぎ捨てるラストシーンまで含めて、これは21世紀の古典であり、スタンダードナンバーなのだと思う。ツイッターでこんな話をしたことがあるんだけど、この映画はアラジンがのび太で、ジャスミンがしずかちゃんで、ランプの精がドラえもんなんだと思う。そう言えばドラえもんもランプの魔人も青いしな。

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というわけで、みんな『アラジン』見てね!と言ったところでもうすでに数百万人が見ているわけで見てないのはお前だけだよという状態なわけだが、面白かった。あと、何度も書くが主演の二人はとにかく錦戸亮広瀬アリスに似ている。一瞬似ているとかではなく全編を通じて「これちょっとメイク変えてるだけで本当は錦戸亮広瀬アリスなんじゃねーの?」というくらい似ているのである。こんな映画なかなかないと思う。おすすめ。