映画『ドラゴンクエスト ユアストーリー』感想。というか罵倒。大人の作家的虚栄心のために子供の観客を踏みつけちゃダメ。

僕は基本的に駄作をいじって笑う、とか、失敗作をみんなでボコボコに叩くというノリがあんまり好きではない。創作なんて基本的に嘘っぱちなんで、ぶっ壊そうと思えばどんな名作だってグチャグチャに批判できるわけである。誰かが必死に書いて震える手で差し…

映画『天気の子』感想。ポストジブリの期待からあえて距離を置く新海誠監督ら若手の俊英たち。あと『空母いぶき』『新聞記者』『天気の子』の3連発に出演する本田翼のアナーキストぶり

たぶん国民が見たかったのは『ラピュタ』みたいなやつだよ!でも名作 『天気の子』のネタバレを含みます。タイトルがネタバレっぽかったので直した。 リアルサウンド映画部様で『天気の子』の記事を書かせていただきました。まずはこれ、正直にポジティブな…

『凪待ち』の香取慎吾の演技にさす深く暗い影と、ある『王の死』についての話

6月28日の公開からずっと、映画『凪待ち』に主演した香取慎吾への絶賛が続いている。最初から興行規模は大きくなく、内容も家族連れやカップルが喜ぶような楽しいものではないにも関わらず、観客動員も好成績を上げている。本来『凪待ち』は単館やミニシアタ…

映画『ホットギミック ガールミーツボーイ』感想 少女漫画とフェミニズム、メントスコーラのごとく天まで噴き上がる山戸結希ワールド

映画には清水尋也、間宮祥太郎、板垣瑞生の三人のハンサムな俳優が出演し、主人公は原作少女漫画の物語をなぞりその三人の間を揺れ動くのだけど、でもこれはスクリーンには一度も登場しない、山戸結希監督と堀未央奈の二人きりの相棒映画、バディフィルムな…

さんざんイケメンウォッシュだスイーツヤクザだとバカにされた『ザ・ファブル』がフタを開けたら傑作アクションだった件

まあ正直言うと、僕もさすがに砂川に向井理はねえだろと思っていた。原作を読んでない人に説明すると、砂川というのは東国原やモト冬樹くらい禿げたゲスな中年ヤクザである。向井理が『ゲゲゲの女房』で水木しげる先生を演じた時はまだしも「あっそういえば…

ファーストデーが1200円になったこの時代に毎日1100円で見られる映画館、109シネマズムービルを知っているだろうか

楽天FunPay様でこのような文章を書かせて頂きました。 card-media.infoseek.co.jp この記事の中で、109シネマズムービルを推しているのだが、これは別にムービルのタイアップ記事ではない。ムービルの人も寝耳に水だと思う。僕が勝手に推しているだけである…

映画『町田くんの世界』についてリアルサウンド様で書きました

映画『町田くんの世界』についてリアルサウンド様で書きました。本文はこちらです。 realsound.jp 『町田くんの世界』、原稿にも書いたのですが、原作とややテイストを変えた演出になっていたものの、周囲の俳優たちがものすごくよかったと思う。というか明…

映画『海獣の子供』感想。数万枚の絵画が1秒に24枚重なって1本の映画を動かす。絵と言う『主観』を動かすアニメの本質が描く、深海のような無意識の物語

時々、「人間の描く絵はあと何年生き残るのだろうか」と考えることがある。ハリウッドが猛烈な勢いで蓄積するCG技術の累積は、手書きアニメどころか生身の俳優すら駆逐しかねない勢いで進歩していく。ユーザーのパーツ選択によって萌えキャラを自動生成する3…

映画『さよならくちびる』感想。はぐれ少女二人組の『ボヘミアン・ラプソディ』。映画を企画した女性プロデューサーは『きのう何食べた?』の瀬戸麻理子氏

まず最初に言っておくと、小松菜奈と門脇麦の歌はめちゃくちゃ上手かった。ハルとレオで『ハルレオ』というのが劇中のデュオの名前なんだけど、このままデビューしても全然いけてしまうと思いました。『音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇん…

『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』感想 日本人の夢を勝手に叶えるんじゃねーよ!というレベルの怪獣天国

冒頭からいきなり『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』のネタバレをします。「ギャオーン!どがががーん!ぴろりろりっぴろりろりっ どががががーん!ギャオーン!ドッババキッツ!どーん!モスラ~やモスラ~!がおーん!」以上ネタバレでした。うわ~映…

映画『賭ケグルイ』感想 貧富の激突を描いたスクールカースト階級闘争ギャンブルシネマの傑作!福原遥の名演も光る

若きモンスター女優、浜辺美波に人生を賭けて挑んだ福原遥の名演。作品としても超一級 シーズン2までできた人気ドラマシリーズの映画化なんだけど、原作未読、ドラマも見ずに冷やかしで見たこの映画、めちゃくちゃ面白かったです。「カイジ」以降、デスゲー…

映画『キングダム』感想。山﨑賢人と吉沢亮の演技力、そして日本映画が見始めた海外展開の夢について

投じられた破格の予算と俳優の素晴らしい演技、海外進出をにらんだ日本映画だと思う 『キングダム』を見た観客は、「吉沢亮と山﨑賢人って対照的だな」と思ったのではないでしょうか。特に、山﨑賢人を他の映画で見たことがない人は、「吉沢亮はすごく整った…

映画『愛がなんだ』感想 または今、映画館で起きている特別な現象について

人類で初めて『片思いブラックホール』の撮影に成功した、世界の秘密に触れる映画である 映画館で何かが起きていると気がついたのは、ゴールデンウィーク明けだったと思う。アベンジャーズエンドゲームと名探偵コナンとキングダムという、ゴジラモスラキング…

【追記】『空母いぶき』の一件その後 これについては雑誌や新聞社がきちんと「ほとんどネットの伝言ゲームによるデマ騒ぎに近かった」と報じるべきだと思う

そんなわけで前回の『空母いぶき』投稿のその後ですが、 ここの文章を抜いて引用して「総理批判」と叩くのはほとんど詐欺に等しい 太田光、百田氏らの佐藤浩市批判「安倍さんも迷惑」 https://www.nikkansports.com/entertainment/news/201905150000169.html…

炎上した『ビッグコミック』の佐藤浩市『空母いぶき』インタビュー原文を読んだら、完全に原文と文脈を違えて引用した産経記者のやらかしであった

佐藤浩市の原文、実は「総理という仕事の過酷さと重要さ」について語っている というわけで、映画『空母いぶき』についての佐藤浩市氏の発言が論争になっている『ビッグコミック』を買ってまいりました。 何の話かわからない方は、まあこちらを読んで下さい…

心配しなくてもコナンやアベンジャーズは死ぬほどロングラン上映するのでこのGWはアニメ映画『バースデー・ワンダーランド』を見に行ってほしい話

いきなり壮絶な話をして悪いが、観客が5人だった。 公開初日の金曜日から3日目である。ゴールデンウィーク最初の日曜日、翌日の月曜は祝日という19時の上映で、100席超の箱に5人だったのである。マジで。あまりにひどいので劇場を出るときに次の最終回の埋ま…

松井玲奈『カモフラージュ』感想。松井玲奈1人監督による小説版『21世紀の女の子』+男の子のような連作短編

『松井玲奈リローデッド』的な第二章の幕開けとなったデビュー小説短編集 文春オンラインで松井玲奈『カモフラージュ』の感想を書かせていただきました。 https://bunshun.jp/articles/-/11422 宇多丸師匠がラジオで「度肝を抜かれた」「一作ごとに文体も人…

映画『まく子』感想。草彅剛の不良父さんぶりが光っている。海外で勝負してほしい俳優

まるで火野正平の再来のごとくヤバくて色気のある草彅君。どうしてこうなった (ネタバレありです) 映画『クソ野郎と美しき世界』の3作目でも、俳優として草彅君のアウトロー演技は光っていたと思う。今作「まく子」でもアウトローとまではいかないものの…

映画『君は月夜に光り輝く』単に『泣ける映画』の再生産ではなく、月川翔監督の原作アレンジで深く静かな映画になっていると思う

『キミスイ』と比べられるが、映画としては今作の方が良いと個人的に思う 月川翔監督と北村匠海と言えば浜辺美波をヒロインにすえた『君の膵臓を食べたい』の大ヒットが記憶に新しく、今作も公開前から「キミスイの二番煎じ」という声は多かった。というか映…

『翔んで埼玉』のコラボ問題について文春オンラインに書いたことの追記と、ブルーハーツの青空についての話

文春オンライン様で、『翔んで埼玉』と高須クリニックのコラボについて書かせて頂きました。↓ bunshun.jp 記事の文字数には入りきらなかったことをとりとめなく書きたいと思います。 映画『翔んで埼玉』を見ながら僕が感じていたのは、なんというかこの映画…

映画『フォルトゥナの瞳』感想 高畑勲と『かぐや姫』を作った女性脚本家は百田尚樹原作小説をいかに生まれ変わらせたかの検証

百田尚樹先生の原作小説を赤ペン先生のごとく修正して良作に変えた坂口理子脚本 映画版『フォルトゥナの瞳』は三木孝浩監督作品。そして脚本は坂口理子氏である。HKT48にもまったく同姓同名のメンバーがいるがもちろん別人で、坂口理子氏は『かぐや姫の物語…

映画『岬の兄妹』感想。優れた俳優が弱者を演じることの意味について

「フョードル・ドストエフスキーは神に見捨てられた人々をこの上なく優しく描き出しました。神を作り出した人間が、その神に見捨てられるという凄絶なパラドックスの中に、彼は人間存在の尊さを見出したのです。ぼくは闇の中でみみずくんと闘いながら、ドス…

映画『21世紀の女の子』全作品を『グラップラー刃牙』の選手入場風に紹介・感想を書いてみた

題しまして『グラップラー結希』 見て来ました、映画『21世紀の女の子』。山戸結希監督の企画プロデュースの元に、若き女性監督が集結し、8分間の連作短編を競う。実は僕はこの映画の公開前に新宿テアトルでやった日本初の試写みたいな時から見て面白いなと…

映画『マスカレード・ホテル』感想 木村拓哉と喧嘩する女優はなぜ輝くのか

長澤まさみという、今や邦画を支える名女優にとっても近年のベストだと思う (ある程度のネタバレを含みます) 『マスカレード・ホテル』の興行収入は2月末の時点ですでに40億円を突破したそうだ。もちろん東野圭吾というベストセラー作家の人気小説の映画化…

映画『母を亡くした時、僕はその遺骨を食べたいと思った』感想。多くの人に関わりのある母からの自立の物語

原作は大ヒットしたエッセイ漫画で、作者の実話。少年時代に白血病を患い、兄からの骨髄移植で生き延びた主人公は、大人になってからステージ4の末期癌の母の死に向き合うことになる。 いったい日本では一年に何本の難病恋愛映画が作られているのだろう。無…

映画『半世界』阪本順治監督の未成熟日本男子批判でもありそれゆえに青春映画でもあり(ネタバレあり)

阪本順治監督の男子映画を支える池脇千鶴の演技力、男子の3倍ギャラ払ってあげて 稲垣吾郎と阪本順治。岡村靖幸feat.ZEEBRAみたいな組み合わせであるが、これが思いの外うまく噛み合っている。映画『クソ野郎と美しき世界』では物語に没入する香取慎吾・草彅…

乃木坂西野七瀬卒業ライブビュー映画館観覧記 立って見るか?座って見るか? 

とても快適だった映画館ライブビュー。立って見るか座って見るかが今後の課題かも 乃木坂46のコンサートには行ったことがありませんでした。ちなみに握手会もない。今回、西野七瀬さん卒業とのことで行ってみたいとは思いつつあなた、「行ってみたい」で行け…

『翔んで埼玉』1位大ヒットでナチス協力者の如く急激に悪化する我々神奈川県民の立場。国際社会に問題視される卑劣な名誉都民しぐさ

ぱるる頑張れ!コメディエンヌとしては48系坂道系OB女優中でもトップ級だと思う (『翔んで埼玉』のネタバレを含みます) いやさ映画見た人なら分かると思いますけど、東京はまだ全然いいわけですよ。なんだかんだ言って最後にフォロー入ってるわけ。独裁者…

映画『チア☆ダン』 TBSの安直な企画を広瀬すずが熱血映画にしちゃったホントの話

(ネタバレを含みます) 映画『チア☆ダン〜女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話〜』の興行収入は最終的に13億円に達し、翌年、制作のTBSはこれに手応えを得て地上波ドラマ版の制作にも乗り出すことになった。成功と呼ばない人はいないと思う…

映画『雪の華』感想 難病悲恋ものというより岡田恵和脚本による『逃げ恥』男女逆の契約恋愛映画

岡田恵和のピンポイント当て書き脚本で中条あやみの魅力大爆発ムービーに (ある程度のネタバレを含みます) 中条あやみさんは自分でもインタビューなどで言及しているが、バリバリに器用なタイプの女優ではないと思う。「昔のオーディションで『モデルじゃ…